プロフィール

自分の写真
名古屋生まれの名古屋育ち。絵との付き合いは、油絵を始めた高校時代。仙台にいた頃は友人と木版画に熱中。社会人になって遠ざかったものの、退職を期に再スタート。水彩、油絵と、もと来た道を楽しみながら続けています。

2007-11-13

犬を偲ぶ


山に行くため早起きしても2、3日すると以前の朝寝坊にもどってしまう。体たらくに遅くなる起床時間を、なんとか食い止めてくれていたわがやの犬が、きのう死んでしまった。

気持ちを紛らわそうと出かけた映画の中で、犬が出てきてつい思い出してしまった。帰り道、青空を流れる雲の塊を見てまた思い出してしまった。自分で気がついている以上に大きなショックを受けたみたいだ。

それにしても、朝7時に「早く起きろ」と言わんばかりに吼え、夕方5時には「夕飯だ」と催促していた犬がいなくなると、生活のリズムは間違いなく狂ってきそうだ。
  

2007-10-22

野焼き


暑かった夏の疲れが出たのか、めずらしく体調を崩してしまいました。こうなると余計に秋の風情を味わいにどこかに出かけたくなってきます。たまたま那須で あった結婚式に出たついでに、ちょっとシンドイかなと思いながら少し足を延ばし、よく出かけている会津に回ってみました。

裏磐梯で紅葉が見れるだろうかと期待をしていましたが1週間ほど早かったようです。ただ弥六沼の近くにあったヤマボウシが透き通るような朱色に染まってい て、少しばかり「期待ハズレ」の穴埋めをしてくれました。

会津盆地に向って下ってくると、稲刈りが終わった田んぼで籾殻を焼く青い煙が、幾すじも立ち上っているのが目に入ってきました。その景色が不思議に気持ち に落着いたようで、本当の秋景色を見たような気がしました。
  

2007-08-29

この夏の思い出


毎年、夏になるとパン作りから自然と遠ざかっていました。夏の暑さは、パン生地を発酵させるには適温であっても、その前段階の捏ねが大変なこと。それに20分足らずでもオーブンで焼き上げるとなると、エアコンで涼しくした台所もすぐにサウナ状態になってしまう。

パンは夏でも涼しい国の食べ物なのだろう、と諦めていたときに気が付いたのがコンパクトなホームベーカリー。これまでは手作りにこだわってきたため見向きもしなかったのですが、これに生地を捏ねるところまでさせれば少しは楽になるかもしれない。

そんな動機から使い始めたのですが、この2ヶ月間、捏ねどころか最後のパン焼までホームベーカリーに頼っているありさまです。暑さから逃れるためだったのですが 味もよくて、この分では”夏限定”のはずだったのが当分続きそうです。”手作り”には少々自信を失くした結果になりましたが、「まぁ、これでいいか」と気持ちよく妥協しています。
  

2007-07-02

ニュウナイスズメ


鳥の写真を撮っているOくんからスズメの写真をもらった。白樺らしい木に止まっていて、名前はニュウナイスズメということ、ふつう見ているスズメと似ているが頬にマークがないこと、日本では生息していないイエスズメとあわせ、世界に3種類のスズメがいることなどが書いてあった。それぞれのスズメの生息域や力関係、それに性質を教えてもらい、日ごろ普通に目にする鳥だけに分かったつもりでいたのでしょう、一つの興味深い世界がこんなところにもあったんだと気がついた。

これだけでスズメの何もかもが分かってくるわけではないけれど、すくなくとも気がつかなかった日常の知識を得ることは、毎日の楽しみを少し増やしてくれるような気がする。気分的には午後のお茶を呑む時のような楽しさであり豊かさなのだろうか。

そんなことを思いながら散歩していると、黒い影が視界のふちをサット過ぎっていった。一瞬のことだったが、たしかにツバメだ。こどもの頃からなじみのある鳥。その世界もすこし覗いてみたい気分になった。
  

2007-06-06

早起きの得

梅雨型の気圧配置になるのが遅れているようで 気持ちのよい天気が続いている。朝6時に起きて散歩に出る時刻は、まだ4月半ばの(昼間の)気温。半そでのポロシャツと短パンではひんやりして肌寒い。が、その感覚がたまらなく好きだ。五感がムズムズするみたいで、生きていることが実感できる。しかし、この感覚はもうしばらくで味わえなくなると思うと、多少眠くても6時起きと散歩は続けようと思う。


約1時間のコースを歩いている。行き先は、昔この地域の豪族の居城跡で、今は公園になっている。その最上部に着くには数十段ある階段を下り、また上るので汗ばむくらいになる。調子がいいと山歩きのトレーニングにと、わざわざ余計な階段を歩いてみる。帰り道は隣接するバラ園に寄ることにしている。もう一月ほど、とりどりの自然色と香りを楽しませてもらっているが、そろそろ終りに近づいてきた気配だ。通勤時間帯にはいった、車の行き交う道路を横切り、一番好きな川沿いの道に入る。ミズキの白い花は一ヶ月前に終って、いまは竹が葉を入れ替える時期のようだ。口笛でウグイスの鳴きまねをすると、こずえから本物が澄んだ音色で返事をしてくれる。"本人"は真剣にわたしを追い払おうとしているかもしれないが、朝の空気のように清々しく聞こえる。
  

2007-05-09

山笑う


毎年この季節、会津を訪れている。ゴールデンウィークの混雑を避け、少し早めに出かけていたが今年はそれが出来ず、いつもより1週間ほど遅い会津入りに なった。暖冬で少雪だったせいもあるが、すでに里山は一面 萌黄の柔らかい色に包まれていた。

山菜採りに出た途中、目に入った柳津のお寺のスケッチがしたくなった。これまで何度も前を通って見ているのに初めてそんな気持ちになった。ひょっとして芽 吹きの淡い緑とお寺のくすんだ色のコントラストがそうさせたのかもしれない。子供の日、前を走る国道は他県ナンバーの車で溢れていた。車を止め、川を挟ん でお寺が見渡せる公園の丘に上がってみた。ガランとした公園は樹木が多く気持ちがいい。お寺のつき出した「舞台」の上に参詣者の白い姿が見え隠れする。眼 下から豊穣な水を流す只見川の深い緑と吹き渡る風が残す風紋、お寺を囲む暗い杉木立の背後からは、雲海のように広がる淡緑のグラデーションが迫ってきた。

スケッチに疲れボンヤリしていると、SLを模った小さな遊覧舟が歌謡曲を鳴らしながら過ぎていった。その後には静けさと跳ねるような陽光の眩しさが残って いた。
  

2007-03-23

美術館、もう一つ


クレー美術館のことを書いたら、スイス滞在中に訪れたもう一つの美術館のことも紹介したくなりました。バーゼル市立美術館、クンスト・ミュージアム バーゼル(Kunstmuseum Basel)です。ホルバインからはじまり、数は多くないですが印象派の代表画家たち、そしてピカソ、シャガール、クレーまで、15世紀から近代までの幅広い作品を所蔵しています。

開催中だったカンディンスキーの特別展を観たあと、歩いて街に出て昼食。館内にもレストランはありましたが、疲れた気分を回復するにはこの方が好きです。午後、同じチケットで再び入場し、常設展のほうを観て回りました。さほど大きくない町(人口20万弱)に、といってもチューリッヒに次ぐスイス2番目の町ですが、これほど充実した作品を持つ美術館があるとは驚きです。それに観たいと思っていたセガンティーニの作品に出会えたのは嬉しいオマケでした。

陽が翳りだしたころ美術館を後にし、屋台で買った焼き栗を頬張りながら散歩。街並みを縫うように走るトラム(路面電車)に乗って帰途につくと、心地よい疲れが広がるのでした。おっと、降りる駅を聞き逃さないようにしなくては。

2007-03-17

クレーセンターとベルンの街並


もう2ヶ月も前ですが、ベルンの街を訪れました。スイスの首都で歴史ある街です。二つ目的がありました。画家クレーの新しい美術館と、世界遺産に登録されている街並を見ることでした。スイス人で親友のPさんが運転と案内を引き受けてくれました。

最初に訪れたのは、旧市街を見下ろせる高台に建つクレー美術館、正確にはポール・クレー・センター(Zentrum Paul Klee)。半年まえにオープンした新しい美術館というだけではなく、建物の形がユニーク。丘の上に三つのウエーブがうねっている格好をしていて、真ん中のウエーブがクレーの作品が展示してある大部屋になっていました。全作品の40%がここにあるそうで、クレーを堪能できる、まさに"センター"だと思いました。彼が描いたメモやスケッチが拡大されて壁に描かれていたのは面白い。ただ丹念に見ていると一日かかってしまうかもしれません。

丘を下りて、深く切り込んで流れるアーレ川を渡ると旧市街。クレー・センターとはガラッと違った雰囲気を感じます。少し大げさに表現すれば、中世の街並に迷い込んだよう。そんな気持ちで時計塔に向かって歩いていると、アインシュタインが一時住んでいたという家があった。彼はベルン時代の1905年、有名な特殊相対性理論の論文を発表したそうで、いよいよタイムスリップしていくような雰囲気に包まれたのでした。
  

2007-03-11

カワセミとミモザ


午後、気分転換したくなると1時間ほど自転車で走ってくる。いつも川沿いの遊歩道を7、8Km南下してから戻ってくるコースで、ちょっとしたお目当てがあるんです。最近その終点近くで見つけたカワセミに会うため。これまで本やテレビで見ていても、実物を見たのは初めてで感動しました。川に突き出た枝に止まり、夕日を背中に浴びて川面を覗き込んでいる。二回目から双眼鏡で観察していますが背中のコバルトブルーの縞模様がとても綺麗。鳥に詳しい友人のOくんに話したら「カワセミから"鳥撮"にはまる人が多い」と返事してきた。色鮮やかな羽の色や華麗なダイビングを見ると分かるような気がする。大口径レンズのカメラを持った人を近くでよく見かけるが、やはりそうなんだろうか。

帰りは、風に背中を押され気持ちよく走れます。ペダルが軽くなると余裕で辺りをきょろきょろ。先日は黄色い房状の花を一杯つけた木を見つけた。ミモザ(フサアカシア)というらしい。この季節よく見かける梅やコブシとは趣が違う花で、印象に残った。
  

2007-03-03

冬眠から覚める


2月も終わりに近づいたよく晴れた日、いつものHさん、Tくんと集落に近い雑木林の山に、キノコを植えるための「ほだぎ」を切りに入った。さほど走らないうちに道路脇には4、50センチもの雪があって、さらに現場手前では作業中の除雪車に前進を阻まれてしまった。一日早く来ていたら歩かなければいけなかったことを思えば待つのは気にならない。それに黄色い除雪車が青空めがけ雪を撒き上げるのを見るのは楽しい。

道路から少し入った堤のそばの木を切る事になった。雪は硬くなっていて作業しやすい。直径2、30センチのナラの木を選び、チェーンソーで倒す側の根元にクサビ型の切り込みをいれてもらった。反対側からの最後の切り込みはやらせてもらった。久しぶりに扱うチェーンソーはぎこちなかったが、木は音を立てながら予定した場所にあっけなく倒れた。2本を切り、80センチほどの長さに切りそろえたころには体が熱くなり、冬眠から覚めた気分になっていた。 
  

2007-03-01

早春飯豊


フキノトウが気になる季節になった。フキノトウで作ったスパゲッティ・ソースの味に魅せられたのがきっかけだ。暖冬の影響で、もう採れているという情報をもらい出かけることにした。その朝はひどく冷え込んだが 青空と明るい日差しが気持ちよい。フキノトウが出る田んぼには残雪が見あたらない。土手に沿って探し始めると、かすかな土のにおいがしてくるような気がする。これが雪国の2月なのだろうか。

その場所からは、真っ白に輝く飯豊連峰が一目で見渡すことができた。季節は違うが、かつて歩いた稜線を目で辿ってみる。一番左にある大日岳には寄れなかったが、いつか登ってみたいものだ。フキノトウは沢山採ることができたが、わたしの好きな、遅い午後の淡い光に浮かぶ飯豊を見にもう一度出て来ようと思った。
  

2007-02-01

アスワンの空


エジプトに来て3日目、今日(12月15日)はアスワンに入った。カイロの砂埃と喧騒から開放されると、肩の力まで取れて軽やかになった心地がする。遺跡めぐりの合間、すなわち移動の時間は束の間の旅心が味わえてうれしい。アギルキア島のイシス神殿へ行く船着場から対岸に見えた村の光景は美しいと思った。抜けるような青空と目が覚めるようなナイルの水。その中間に、この地方の砂漠の砂のような色をした家々が、午後の日差しを受けて輝いていた。風に吹かれ眺めていると、時間が止まっているような錯覚を覚えた。ボートが向きを変え、西日が湖面に反射して顔を照らした。