プロフィール

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名古屋生まれの名古屋育ち。絵との付き合いは、油絵を始めた高校時代。仙台にいた頃は友人と木版画に熱中。社会人になって遠ざかったものの、退職を期に再スタート。水彩、油絵と、もと来た道を楽しみながら続けています。

2013-04-29

窓からの景色

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  朝、目覚めた時にいつもと違うところにいる自分に気づくこと、旅行に出たときにしばしば持つ感覚です。急いでいないなら 旅情を楽しめる一時で 好きです。「さて、どんな一日になるのだろうか」、と背伸びをしながら窓の外を眺めたくなります。

  この絵は10年ほど前のスケッチブックにあった一枚を最近油絵にしたものです。ずいぶん前ですが、スイス南部のイタリア語を話す地方で泊まったときのものです。200年近く経つ古い家で、しかも農家だったとかで、確かに1階の裏側には家畜を飼っていたという薄暗い部屋が残っていたのを憶えています。小さな窓からの景色は、大部分が周りの家々の錆びたような色の屋根でしたが、古いながら統一があって、落ち着いた雰囲気でした。窓のガラスも古いらしく、適当に景色が歪んで見えました。

  もうゴールデンウィーク。こういう気分をまた味わいたくなる季節になって来ました。
 

2013-04-02

時の厚み

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  今度の一枚はメムノンの巨像です。何年か前ですが、王家の谷からルクソールに戻る途中に寄りました。ナイル川の西岸、川から滲みだした水が作る 緑のベルトが果てる辺りにありました。後ろは砂漠へと続く山です。エジプトでは数千年も経つ建造物ばかりを見て回ったのに、経過した時間の長さがなかなかピント来ませんでした。しかし、傷みが激しいこのアメンホテプ3世の像を目にした時は、少し肌で感じたような気になりました。

  まともに残っているのは僅か、全体にひびが入って顔もわかりません。それなのに、まだ生きていて、何か話しかけてくるように見えました。後方に見えるのは、昔、王家の墓を盗掘するのを仕事にしていた人々の末裔が住んでいる村だと、ガイドが話していました。村の人には会っていませんが、たぶんすごく生活力のある人々だろうと、土産物を売る人たちの顔と交錯して浮かんできました。乾燥した空気、雲ひとつない青空、岩を砂に変えてしまうような強烈な日差し。その中で逞しくつながれてきた人々の営みをこの巨像が象徴しているようでした。