今度の一枚はメムノンの巨像です。何年か前ですが、王家の谷からルクソールに戻る途中に寄りました。ナイル川の西岸、川から滲みだした水が作る 緑のベルトが果てる辺りにありました。後ろは砂漠へと続く山です。エジプトでは数千年も経つ建造物ばかりを見て回ったのに、経過した時間の長さがなかなかピント来ませんでした。しかし、傷みが激しいこのアメンホテプ3世の像を目にした時は、少し肌で感じたような気になりました。
まともに残っているのは僅か、全体にひびが入って顔もわかりません。それなのに、まだ生きていて、何か話しかけてくるように見えました。後方に見えるのは、昔、王家の墓を盗掘するのを仕事にしていた人々の末裔が住んでいる村だと、ガイドが話していました。村の人には会っていませんが、たぶんすごく生活力のある人々だろうと、土産物を売る人たちの顔と交錯して浮かんできました。乾燥した空気、雲ひとつない青空、岩を砂に変えてしまうような強烈な日差し。その中で逞しくつながれてきた人々の営みをこの巨像が象徴しているようでした。
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